ふかいちゃん観察日記

#02 実在/命名

てのひらサイズの小人

●●●●年×月◇日

昨日やってきた未知の生き物、もとい小人。

ヒト型だが、彼なのか彼女なのかもよく分からない。他の三人称が必要だ。英語にはあった気がするけれど、日本語だとなんと表せばいいのだろう。

まんまるな目が二つ。白目の真ん中に、どこまでも真っ黒なちいさな瞳。

テーブルの上でのんびりと過ごすこの小人は、まるで人見知りなどしないようで、私の書きかけのノートの上でゆらゆらと楽しそうに首を振っている。

昔こんなおもちゃがあった気がする。太陽光で動いていたが、この小人の動力は何なのだろうか。

掌を差し出すと、何の警戒心もなく上に駆け上がってくる。小さな存在。

私が眺めまわすのを不思議そうにただ見ている。

服をつまんで持ち上げる。簡単に持ち上がる。よく分からないまま大人しく宙に浮かんでいる。

再び掌の上に戻し、自由にさせる。ころころと丸まって転がっている。

このまま「小人」だとなんとなく落ち着かない。この存在に、名前をつけることにする。

何もかもを素直に受け入れる懐、どこまで続くのかわからないほどのまっ黒な瞳。

「ふかいちゃん」と呼ぶことにした。

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